投稿日:2025/11/19
みなさんこんにちは。
新潟県で3PL事業を展開している、株式会社bud梱包出荷サポートです。
このブログでは、物流業界にまつわる様々な事柄について解説しています。
今回のシリーズのテーマは「誤出荷」。
全10回のシリーズで、誤出荷に関する基本的な知識から、誤出荷に潜む思いもよらぬリスク、コストダメージ、根絶に向けた対策など、余すことなく解説していきます。
前半の5回は荷主企業に向けて、後半の5回は倉庫に向けたコンテンツを展開しますので、ぜひ全編お読みいただいて、誤出荷についてマスターしてください!
前回の記事では、なぜ手作業ベースのオペレーションが成長の壁となるのかを明らかにし、賢明な荷主企業がパートナーに求めるべきテクノロジーの階層を具体的に提示しました。
倉庫向けのシリーズ第1回となる本記事では、誤出荷の原因の大部分を占める「ヒューマンエラー」について。
その背後にある根深い「なぜ」に対して、人間の脳の仕様と心理的働きに着目してアプローチします。
ぜひ最後までお付き合いください!
はじめに
「またAさんのピッキングミスか。もっと注意するように、厳しく言っておかないと」。
倉庫の現場で誤出荷が発生した際、このような会話が交わされることは少なくありません。
私たちは、ミスが起こると、つい「誰が」やったのかを問い詰め、その担当者に「もっと注意しろ」「集中しろ」と精神論で解決しようとします。
しかし、このアプローチは、誤出荷を永遠に根絶できない袋小路への入り口です。
なぜなら、「ヒューマンエラー」は原因ではなく、あくまで結果だからです 。
ミスの背後には、人間の脳の仕組みや心理的な特性に根差した、もっと根深い「なぜ」が隠されています。
本記事では、倉庫管理者が陥りがちな「犯人探し」の罠から脱却し、認知心理学のレンズを通してヒューマンエラーの真の原因を探ります。
なぜ、どんなに優秀なベテランでもミスを犯すのか。
なぜ、「ダブルチェック」が機能しないことがあるのか。
その答えは、人間の脳の「仕様」を理解し、「正しい行動を容易にし、間違った行動を困難にする」システムを設計することにあります。
議論を「誰が」から「なぜ」へとシフトさせること。それこそが、真のゼロエラー倉庫への唯一の道なのです。
「もっと注意しろ」という幻想 ― なぜ精神論は機能しないのか
人間は、同じ作業を繰り返すうちに、脳がエネルギーを節約するために、意識的な思考を介さない「自動操縦モード」へと切り替わります。
これは、自転車の運転や歯磨きと同じで、いちいち考えなくても体が勝手に動く状態です。
倉庫内でのピッキングや検品といった作業の多くは反復的ですから、日常的に作業を繰り返す中で、作業者が「自動操縦モード」に切り替わっているだろう、ということをまず念頭に置くべきです。
この自動操縦モードは効率的な作業には不可欠ですが、同時にエラーの温床にもなります。
注意力の限界
人間が常に100%の集中力を維持することは、生理学的に不可能です。
特に単調な作業では、注意力が散漫になるのは自然なことです。
「もっと注意しろ」という指示は、この人間の脳の限界を無視した、非現実的な要求であることをまずは理解しましょう。
慣れという落とし穴
特にベテラン作業員ほど、「横着」や「慢心」からくるミスを犯しやすいと言われます 。
これは、怠惰からくるものではありません。
作業に習熟し、無意識レベルでこなせるようになった結果、意識的な確認プロセスを脳が「不要」と判断し、スキップしてしまうために起こるのです 。
「注意不足」を個人の資質の問題として片付ける限り、根本的な解決には至りません。
私たちは、人間が「注意しなくても間違えようがない」仕組み、すなわちエラープルーフなシステムを構築することにこそ、知恵を絞るべきなのです。
「認知バイアス」という名の罠
「認知バイアス」という言葉をご存じでしょうか。
人間の脳は、情報を効率的に処理するために、特定の思考の「クセ」や「近道(ショートカット)」を持っています。
これを認知心理学では「認知バイアス」と呼びます。
このバイアスが、倉庫現場で様々な誤出荷を引き起こす原因となっています。
以下に、いくつかの認知バイアスを紹介します。
1.確証バイアス:「見たいもの」を見てしまう
確証バイアスとは、自分が信じていることや、期待していることを裏付ける情報ばかりを集め、それに反する情報を無視してしまう傾向のことです。
例えば、ピッキングの時に起こる確証バイアスの例を見てみましょう。
ピッキングリストに「商品A-001」と書かれているとします。
作業員は、A-001が保管されている棚に向かいます。
その棚に、よく似た「商品A-010」が紛れ込んでいたと仮定してください。
本来であれば、ラベルを詳細に確認して、「これは商品A-010だから、ピッキングしてはいけない」と判断し、正しい商品をピッキングするべきです。
ところが、作業員の脳は棚の前に来た段階で「ここにあるのはA-001のはずだ」という期待、確証に基づいて行動しています。
結果として、商品のラベルを詳細に確認することなく、A-010をピッキングしてしまうのです。
実際にそこにあるものではなく、そこにあると「期待している」ものを見てしまう。
これが確証バイアスです。
2.「絶対正しい」という確信の罠:ダブルチェックが機能しないワケ
人間は、自分の行動が「絶対に正しい」と100%確信しているとき、確認作業を心理的にスキップするようにプログラムされています 。
この心理が、ダブルチェック体制を無力化させることがあります。
例えば、二人一組で作業している現場があったとします。
一人目の作業を二人目の作業者がチェックをして、ミスがないことを確認する、という、ダブルチェックの体制です。
でももし、
一人目の作業者が「自分はこの作業に熟練していて、いつもミスはしないから、今回もミスはしていない」「自分の作業は絶対正しい」と思い込んでいたら。
もしくは「自分がミスをしていても次の人が見つけてくれるだろう」「次の人のチェックは絶対正しい」と思い込んでいたら。
本来であれば自分の作業をチェックしてから次の工程に回すべきところ、チェックが甘くなってしまうことが容易に想像できます。
さらに、この一人目の作業者が「普段ミスをしない人」だった場合、どうでしょうか。
二人目のチェッカーに「あの人がやったんだから、まず間違いないだろう」「この人の作業は絶対正しい」という思い込みがあったら。
見つかるべきエラーが見過ごされてしまうと思いませんか。
「ダブルチェック」は、体制を作るだけでは意味がないのです。
3.認知負荷:脳のメモリ不足がエラーを招く
人間の脳が一度に処理できる情報量には限りがあります。
これを「認知負荷」と呼びます。
倉庫の作業環境が、この認知負荷を高める要因に満ちていると、エラー率は必然的に上昇します。
認知負荷を高める要因には、以下のようなものがあります
乱雑な作業スペース
どこに何があるか分からず、作業を始める前や作業中にも物を探さなければいけない。
「物を探す」という行為は、脳のリソースをひっ迫します。時間もエネルギーも必要以上にかかってしまいます。
分かりにくい指示書
文字が小さい、情報量が多い、フォーマットが統一されていないピッキングリスト…。
「物を探す」のと同じく、紙の上で「情報を探す」必要があり、脳のリソースをひっ迫します。
過度なプレッシャー
生産性を過度に追求し、作業速度ばかりを求められる環境。
作業者の意識が「正しく作業を遂行する」ことではなく「早く終わらせる」ことにのみ向いてしまっている状態です。気持ちが焦っているときに、丁寧な仕事はできないものです。
頻繁な中断
作業中に頻繁に話しかけられたり、別の作業を頼まれたりする。
集中が途切れてしまうほか、どこまで作業を進めたか分からなくなってしまいます。
結果として、本来踏むべき確認工程をスキップしてしまったり、作業の抜け漏れが発生することにつながります。
これらの要因は、作業員の脳のメモリを不必要に消費させ、本来集中すべき商品や数量の確認といった重要なタスクへのリソースを奪い、結果としてミスを引き起こすのです。
ミスが発生しない作業フローの設計 ― 心理学を応用した「ポカヨケ」
ここまで、ヒューマンエラーの根本原因が、人間の脳や心理的特性にあることをお話してきました。
倉庫内でのヒューマンエラーを減らし、誤出荷を防止するためにはどのように対策すればよいのでしょうか?
対策は精神論ではなく、その特性を逆手に取ったシステム設計、ミスを起こさせない仕組みの構築にあるはずです。
製造業の品質管理で生まれた「ポカヨケ(うっかりミスを防ぐ仕組み)」の思想は、まさにこの考え方に基づいています。
「ポカヨケ」とは「作業者のミス(ポカ)」を「避ける(ヨケる)」仕組みを指す言葉です。
1.強制機能(Forcing Functions):間違った行動を物理的に不可能にする
最も強力なポカヨケは、間違った手順が実行された場合、プロセスがそれ以上先に進めなくなるような仕組みです。
例えば、ハンディターミナルを使ったバーコードスキャンの仕組みはこれにあたります。
ハンディターミナルでピッキングする商品をスキャンした際、もし商品が間違っていれば、大きな警告音と共に画面が赤く点滅し、正しい商品をスキャンするまで、次の作業に進めなくなります。
作業員が「注意する」までもなく、システムが強制的にエラーを止めてくれる仕組みです。
ゲートアソートシステム(GAS)を用いた仕分けプロセスも、これにあたります。
ピッキングしてきた商品をハンディでスキャンすると、コンテナに付いたフタが開き、対象の注文に対して正しい商品をアソートさせる仕組みです。
複数の注文を一度に捌きたい場合などに、商品のテレコを防ぐ有効なシステムです。
2.目で見る管理(Visual Management):直感で理解させる
脳は、文字を読むよりも、色や形、位置といった視覚情報を処理する方が得意です。この特性を利用し、直感的に正しい判断ができる環境を作ります。
例えば、色分けとロケーション管理を組み合わせる方法です。
- 商品のカテゴリーごとに棚の色を分ける
- 外見が酷似している商品は、物理的に離れた場所に保管する
- 誰が見ても分かるように、大きな文字と矢印でロケーションを表示する
- 倉庫全体のマップを作成し、どこに何があるかを「見える化」する
指示書のフォーマットひとつとっても、できることがたくさんあります。
- JANコードの末尾4桁を大きく表示する
- すべての荷主で指示書のフォーマットを統一する
- 目線の動きに合わせて情報を配置する
- 太字や下線などを用いてメリハリを付ける
これらの工夫は、商品や情報を探したり、場所を特定したりするための認知負荷を大幅に削減し、脳のリソースを本来の確認作業に集中させる効果があります。
「パッと見て、わかる」
シンプルですが、とても大切な工夫です。
3.プロセスの単純化と標準化:迷わせない、考えさせない
複雑な作業は、それだけで認知負荷を高め、ミスの原因となります。
作業はなるべくシンプルに、誰がいつどこでやっても同じ「正しい結果」が出るようなプロセスを構築しましょう。
例えば、作業手順の単純化と標準化には以下のような取り組みが有効です。
- 複雑なタスクを、単純で連続的なステップに分解する
- 「10件」「10個」のように作業をキリの良い数字で分け、いつもそのバルクで作業が完結するようにする
- 誰がやっても同じ手順、同じ品質で作業ができるように、オンボーディングの際には写真や動画を活用した分かりやすいマニュアルを用意する
- 作業台近くに写真を掲示していつでも確認できる状態にする
「正しいやり方」が一つしかなく、作業がシンプルな状態を作り出すことで、作業員が迷ったり、自己流の判断をしたりする余地をなくします。
まとめ:「人間は間違えるもの」という前提から始める
いかがだったでしょうか。
誤出荷の原因となるヒューマンエラー、その背景には人間の脳や心理的な働きが存在していることがお分かりいただけたかと思います。
規律や罰則ではなく、まずは「人間は不完全であり、必ず間違えるものだ」という前提に立ちましょう。
その上で、「必ず間違える生き物に、間違いを起こさせないためにはどのようなシステム、フローを構築するべきか?」という考え方にシフトしていく必要があります。
人間の認知のクセを理解する。作業者の脳の負担を軽くする。直感的に正しい行動がとれるように導く。
このような人間中心の設計思想こそが、ストレスが少なく、生産性が高く、そして何よりも品質の高い、真に優れた倉庫オペレーションを実現する道だと思います。
エラーの原因は「人」にはなく、常に「システム」にある。
その視点を持つことが、すべての改善の第一歩となります。
次回は
一見するとソフトな概念である「組織文化」が、いかにして誤出荷率というハードな数字に直結するのかを解き明かします。
ぜひお楽しみに!
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