投稿日:2025/12/10
みなさんこんにちは。
新潟県で3PL事業を展開している、株式会社bud梱包出荷サポートです。
このブログでは、物流業界にまつわる様々な事柄について解説しています。
今回のシリーズのテーマは「誤出荷」。
全10回のシリーズで、誤出荷に関する基本的な知識から、誤出荷に潜む思いもよらぬリスク、コストダメージ、根絶に向けた対策など、余すことなく解説していきます。
前半の5回は荷主企業に向けて、後半の5回は倉庫に向けたコンテンツを展開しますので、ぜひ全編お読みいただいて、誤出荷についてマスターしてください!
前回の記事では、物流テクノロジーの最前線である「予測AI」と「デジタルツイン」の概念を紹介し、AIが過去のデータから未来のエラーを予知する、先進的な倉庫の姿をお話しました。
誤出荷101|予測AIと「デジタルツイン」による誤出荷防止の可能性
今回の記事では、プロジェクションマッピングや高度な画像認識AIといった技術によって、「ピッキング」という庫内作業がどのように変貌するか、その可能性を探ります。
ぜひ最後までお付き合いください!
はじめに
倉庫のピッキング作業。
それは、紙のリストやハンディターミナルの小さな画面に表示された文字情報を「読み」、棚に並んだ商品の中から目的のものを「探し」、それが正しいかを「照合する」という、一連の精神的な翻訳作業の繰り返しです。
この「読む→探す→照合する」というプロセスこそが、作業者の脳に大きな認知負荷をかけ、ヒューマンエラーが生まれる温床となっています 。
もし、この精神的な翻訳作業そのものを、テクノロジーによって不要にできるとしたらどうでしょうか。
チェック体制を強化してミスを「見つける」のではなく、正しい行動が最も直感的で、最も楽な選択肢になるようにシステムを設計することで、エラーを「根絶する」。
そんな未来が、すでに現実のものとなりつつあります。
本記事では、プロジェクションマッピングや高度な画像認識AIといった、人間とシステムのインターフェースを根本から変える次世代の倉庫技術を紹介します。
これらの技術は、指示を「見る」ものから、光や音で「感じる」ものへと変え、ピッキングの正確性を、意識的な努力から“本能的”なレベルへと引き上げます。
認知負荷との戦い ― 従来型ピッキングの限界
以前このシリーズでもお話したように、ヒューマンエラーの多くは、作業者の「不注意」や「怠慢」が原因ではありません。
作業プロセスそのものが人間の認知特性に合っていないために発生します。
精神的な翻訳コスト
「棚番B-03-Cの、商品コード4987654321を、3個」
作業者は、この文字列情報を記憶し、広大な倉庫の中から対応する物理的な場所を探し出し、商品ラベルと照合し、そして数量を数えなければなりません。
この一連のプロセスは、脳のワーキングメモリに大きな負担をかけます 。
ワーキングメモリとは、会話や読み書き、計算といった日常的な活動に不可欠な、情報を一時的に記憶し処理するための脳の機能です。
「脳の作業台」や「脳のメモ帳」と例えられることが多く、倉庫に例えると、作業スペースでの情報加工・利用の能力を指します。
ただし、人間の脳が一度に処理できる情報の量には限界があります。ワーキングメモリも同様です。
様々な説がありますが、多くの人が一度に覚えられる情報の数は、大体4個~7個くらいのかたまり(チャンク)と言われています。
「棚番B-03-Cの、商品コード4987654321を、3個」
という情報は、チャンクにするなら
「棚番」「B-03-C」「498」「765」「4321」「3個」といった分け方をします。
この情報だけで、すでに6個のチャンクを消費しています。
これが仮に
「棚番B-03-Cの、商品コード4987654321を、3個と、棚番B-05-Aの、商品コード4123456789を、5個」
という風に増えたとしたら。
この情報量は人の脳が一度に処理できる容量を優に超えていて、ヒューマンエラーの原因になったり、何度も確認する工数が発生したりと、様々なコストを招きかねません。
集中力の消耗
この精神的な翻訳作業を一日何百回、何千回と繰り返せば、どんなに熟練した作業員でも集中力は消耗します。
そして、集中力が切れた瞬間に、数字の見間違いや、似たような商品の取り違えといったミスが起こるのです 。
これまでの改善策は、ダブルチェックやトリプルチェックといった形で、この翻訳作業が正しく行われたかを「後から確認する」ものでした。
しかし、次世代の技術は、この「翻訳作業そのもの」をなくすという、まったく異なるアプローチを取ります。
光が導くピッキング ― プロジェクションマッピングの衝撃
プロジェクションマッピングと聞くと、建物の壁面に映像を投影するエンターテインメントを思い浮かべるかもしれません。
しかし、この技術が今、物流倉庫に革命を起こそうとしています。
仕組み:指示が「文字」から「場所」になる
まずは、映像を投影するためのプロジェクターが必要です。
これは大方、倉庫の天井に設置されます。
個のプロジェクターから、作業指示が光や映像として、物理的な棚や床、コンテナに直接投影されるのです。
- 作業員がピッキングカートで所定の位置に着き、注文をスキャン
- プロジェクターがピッキングすべき商品が保管されている棚の間口を、ライトアップ
- 同時に、棚や床にピッキングすべき数量(例:「3」)が大きく投影される
- さらに、次のピッキング場所まで、床に矢印を投影して誘導することさえ可能
このシステムでは、作業員はもはやリストの文字を読む必要がありません。
「光った場所から、表示された数を取る」
作業は、極めてシンプルで直感的なものになります 。
高度なエラー防止機能
プロジェクションマッピングは、単に場所を示すだけではありません。
センサーと連動することで、強力なポカヨケ(エラー防止)機能を発揮します。
例えば、作業員の手が、間違った間口に伸びたとしましょう。
センサーがそれを検知すると、投影された光が赤く点滅したり、警告音が鳴ったりして、即座にミスを知らせてくれます 。
これにより、エラーが確定する前に、その場で修正することが可能になります。
この技術は、指示と行動の間の「認知的な距離」を限りなくゼロに近づけ、人間の注意力とか集中力といった脳の限界値を取り払い、正確な処理を可能にします。
「倉庫の目」となるAI ― 画像認識技術の台頭
「作業空間をスマート化する」という流れは、画像認識AIの活用によって、さらに加速しています。
倉庫に設置されたカメラが、もはや単なる防犯・監視のためだけでなく、オペレーションの品質と効率を向上させる「賢い目」として機能し始めています 。
自動検品と自動仕分け
バーコードレス検品
ベルトコンベアを流れる商品をAIカメラが捉え、その形状、色、サイズ、印字されたロゴなどから、それが何であるかを瞬時に識別します 。
バーコードを一つひとつスキャンする必要さえなく、AIが人間の代わりに「見て」検品してくれるのです。
数量のカウントも自動で行えるため、数え間違いという古典的なミスを撲滅できます 。
インテリジェント仕分け
AIが商品を識別し、その情報に基づいてコンベアの分岐を自動で切り替え、正しい配送先方面へと仕分けることも可能です 。
プロセス監視と危険予知
画像認識AIの役割は、商品の識別だけにとどまりません。
安全管理
通路に放置された障害物や、フォークリフトの危険な動き(一時不停止など)をAIが自動で検知し、管理者に警告を発することができます 。
安全な職場環境は、品質の高い仕事の前提条件です。
作業分析
作業員の動きを動画で解析し、非効率な動線や無理な姿勢での作業を特定し、プロセスの改善や身体的負担の軽減に役立てることもできます。
人間中心のメリット ― テクノロジーがもたらす真の価値
これらの先進技術がもたらすメリットは、単なるエラー削減や効率化だけではありません。その真の価値は、働く「人間」にポジティブな影響を与える点にあります。
トレーニング時間の大幅な短縮
作業が「光に従う」「システムが見てくれる」といった直感的なものになるため、新人スタッフの教育にかかる時間が劇的に短縮されます 。
これにより、スキルレベルが均一化され、教育担当者の負担も軽減されます。
ストレス軽減とエンゲージメント向上
エラーが起こりにくいシステムは、「またミスをしてしまうのではないか」という作業員の心理的ストレスを和らげます 。
また、光や音によるインタラクティブなフィードバックは、単調な作業にゲームのような要素をもたらし、集中力や仕事へのエンゲージメントを高める効果も期待できます。
まとめ:テクノロジーで人間の能力を拡張する
いかがだったでしょうか。
誤出荷防止の未来は、人間をより厳しく管理・監視することにあるのではありません。
テクノロジーを用いて人間の認知的な弱点を補い、その能力を最大限に拡張することにあります。
プロジェクションマッピングや画像認識AIは、そのための強力なツールです。
これらの技術は、作業指示を脳で「翻訳」するという負担から人間を解放し、より直感的で、よりストレスの少ない、より正確な働き方を可能にします。
「正しい行動」が、最も抵抗の少ない、自然な道筋になるようにシステムをデザインする。
この人間中心の設計思想こそが、正確性、スピード、そして従業員満足度という、これまでトレードオフの関係にあると思われていた要素を、同時に向上させる鍵なのではないでしょうか。
次回は
誤出荷101|5Sだけでは足りない?「+1S」で誤出荷を防ぐ
従来の5Sの概念を拡張し、独自の戦略的フレームワーク「5S+1」を提案します。6番目のS「備える」を加えて、予期せぬトラブルにも負けない現場のつくり方についてご説明します。
ぜひお楽しみに!
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